2016年5月22日日曜日

まずは身体疾患を疑うこと

「精神疾患が頭に浮かんでも、まずは身体疾患の存在を疑うこと」

研修医時代、総合内科に在籍していたときに指導医の先生からいただいた言葉です。当時、私はすでに大学病院精神科に入局していたのですが、特例として一般総合病院の内科で研修することを許されていました。

冒頭の指導は、私がすでに精神科に進路を決めていたからこそ頂いたものであり、以来、鉄則として私の頭に叩き込まれました。実際にその後、心の困りごとが主な受診のきっかけであるにも関わらず、主要因が身体疾患であったケースを数多く経験することになりました。

例えば甲状腺疾患です。甲状腺が働き過ぎると不安症状、集中力減退、焦燥感などの、働きが低下し過ぎると抑うつ気分、活動性の低下などの「精神症状」が出現します。

もう一例。気道の閉塞などが原因で、睡眠中に何回も呼吸が停止してしまう、睡眠時無呼吸症候群という病気があります。抑うつ気分、日中の眠気、疲労感など、うつ病と似た症状が出てきます。

当クリニックは開院して1年弱ですが、甲状腺機能異常、睡眠時無呼吸症候群などの身体疾患をお持ちの方をすでに何人も発見し、専門医療機関にご紹介させて頂いております。医療機関としては当然のことですが、受診いただく皆様の困りごとの原因が精神疾患であると決めてかからず、身体疾患も含めた総合的な視点で診療にあたらせていただきます。

ブログを書いているうちに、その指導医の先生の温かい眼差しが脳裏に浮かんできています。大学病院から特例でやってきた、いわば外様研修医の私にたいして、指導医の先生は他の研修医達と分け隔てなく接し、指導してくださいました。もちろん、研修医の先生達も温かく私を迎えいれてくれました。

精神科医、内科医、臨床心理士など、様々な立場の方々にこれまでご指導をいただいてきました。そういった方々への感謝を胸に、日々の臨床を行いたいと考えています。

それでは、また。