2017年8月13日日曜日

心理療法の流派について

心理療法とひとくちに言っても、様々な流派があります。
精神分析、認知行動療法、対人関係療法、来談者中心療法、EMDR、などなど...。

私はそのなかのひとつ、認知行動療法を専門としているのですが、実は認知行動療法の中にも様々な学派・流派があり、もう何がなんやら...という感じになっているんですね。

そんな中で、私が最近お気に入りの精神療法家は、John C. Markowitzという精神科医です。彼が専門とするのは対人関係療法という心理療法なのですが、認知行動療法の訓練・実施・指導経験もあるようで、だからなのでしょう、非常に柔軟な思考を持っておられるようです。そして、彼の著書を拝読すると、患者さんの利益を第一に考えていることが、文面のあちらこちらからにじみ出ているんですね。ちょっと紹介してみますね。(わかりやすくするために、やや意訳します)

Interpersonal Psychotherapy for Posttraumatic Stress Disorder(2016)より
「あるカンファレンスで、『認知行動療法をディスる野郎』と紹介されたことがある。私はそんなことは全く思っていない。私は認知行動療法の訓練・治療・指導も行なってきているのだ。認知行動療法が効果的であることはわかっている。ただ、認知行動療法が患者さんを治療する唯一の手段ではないと思っているだけだ。」
「心理療法の歴史は、流派間の多くの争いで彩られてきた。だけど、患者さんたちが、最良の治療を受けられるように、心理療法家たちで協力して取り組んでいくべきだと私は思う。」

Interpersonal Psychotherapy for Dysthymic Disorder(1998)より
「心理療法家が、全ての患者を『プロクルステスのカウチ』に乗せて、単一の治療法を当てはめる時代は過ぎ去ったと私は信じている。全ての患者に全く同じ薬を処方する薬物療法家なんて、いないようにね。」

私が主軸とする心理療法は、これからも認知行動療法ですが、認知行動療法の治療効果を増すためにも、幅広い視点が必要と考えています。例えば、複雑性悲嘆をお持ちの方に対して、私は「Complicated Grief Treatment」を行うことがありますが、この治療法は、認知行動療法と、対人関係療法と、動機づけ面接のハイブリッドなのです。認知行動療法のことだけ考えて、訓練を続けるわけにはいかないということですね。

目の前の患者さんに対し、最適な治療は何か。常に自問自答し、訓練を重ねていきたいと考えています。

それでは、また。